セブン&アイが買収される?円安?国力低下?便利な日本の象徴”コンビニ”の巨人セブンイレブンがなぜ外資に狙われるのか

今月19日、セブン&アイ・ホールディングスは、カナダのコンビニエンスストアや小売店を展開する大手アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けていることが経済紙を中心に報道された。

この報道を受け、セブン&アイは提案内容を精査するため、既に社外取締役のみで構成する特別委員会を設置、受け入れるかどうかを「速やかに検討し、返答する予定」とし、提案が事実であることを認めている。

セブン&アイといえば、コンビニ業界トップの「セブンイレブン」や、スーパーの「イトーヨーカドー」や「デニーズ」などの飲食チェーンを要する日本の大手グループ企業だ。

そんな日本人の生活に密着した企業に買収の話が持ち上がったことが驚きであると共に、買収額も巨大になる可能性があることからグローバル経済の視点からも大きな注目を集めている。

買収が実現した場合、買収額は少なくとも5兆円を超える?

仮にグループ全体の買収が実現した場合には買収額は少なくとも5兆円を超える見通しとなり、世界的な巨大小売りグループが誕生する可能性があるようだ。

ただ日本にとってはショッキングな話ではあるが、これまで海外企業による日本企業への大型買収の事例としては、鴻海精密工業によるシャープへの出資で約4000億円だったこと、それでもひと悶着というか紆余曲折あったので、これほどの巨大な買収になると国の関与も考えられ、現実的にはそうすんなりと進む話ではないというのは想像がつく。

また今回の提案がグループ全体の買収なのか一部なのかはまだ明らかになっていない部分も多いなかでも、すでにこの報道を受けてセブン&アイの株価は上昇しており、買収額はさらに増えて7兆円程度が必要になる可能性も指摘されていることから、いくら円安の状況とはいえ、クシュタール側の財務状況から鑑みてもグループ全体を買うのは難しいという見方が、今のところは大勢を占めているような気がする。

円安、国力低下で日本の企業が狙われている?

こういう話題になると「日本オワタ」と言いたい人たちがこぞって、円安、国力云々と日本下げに勤しむ様子が伺えるが、そもそも国力の低下している魅力のない国からは撤退することはあっても買収して参入=投資をしたいと思う外資はないということ。

また近年の円安の影響も指摘されるが、セブン&アイには2020年頃にも買収提案があったといい、その頃のドル円は110円前後で推移していたことから円安だったとは言えない。

野村総合研究所の木内登英チーフエコノミストは、海外企業による日本企業買収の動きが円安により加速しているとの見方を否定。「円安は2年半前から続いているが、買収の動きが強まっているわけではない」

出典:産経新聞

このように現在の円安においても特に目立って日本企業が狙われているわけではない。

むしろ翌2021年にはセブン&アイ側が米ガソリンスタンド併設型コンビニ「スピードウェイ」を約2兆3000億円という巨額買収をしているくらいなので、セブン&アイに体力がないとか、国力云々の話ではないことは明白で、単純に正当な市場原理でM&Aが行われているだけなのである。

なぜ買収していた側が、買収されることを検討するのか

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元々日本のセブンイレブンはアメリカの企業からライセンスを取得したにすぎなかったが、日本で独自に成長したことで逆買収し、セブンイレブンを名実ともに日本のものにした。

さらにはアメリカでの販路拡大を狙い、買収する側に立ってグローバル展開をしていたはずのセブン&アイがなぜ買収される側に立たされているのか。「ふざけるな!」と突っぱねればいいじゃないか…だが今の時代そういうわけにも行かないのだ。

日本には正当な市場原理に基づいて「真摯な買収提案」を受け取った場合のガイドラインがあるため、時間やコストをかけて「真摯な検討」を行わなければならない。

昨今のグローバル化する経済や市場に合わせて、これまでの資本主義でありながら社会主義的に企業を守る古い考えはダメだよというルールであり、ある意味、日本の企業もようやくこのような対応をするようになったと評価すべきところで、海外からも動向が注目される案件にもなっている。

それにしてもなぜ、日本でも力があると思われているセブン&アイが再三にわたって外資に狙われるのだろうか。

グループが抱える問題と魅力ある日本の「コンビニ」システム

セブン&アイにとって今回のような買収話は初めてではなく、先にも触れたようにクシュタール側から以前にも提案はあったが正当に断ったのだろう、それなのに今回再び狙われたのはセブン&アイが抱えている問題が根本にあると見るべきだろう。

長年、好調なセブンイレブンが苦境のイトーヨーカドーなどの赤字を隠していることを指摘されるも、改善されることなく現在に至っている。

そのようなグループ内の効率の悪さから株価は低迷し、株主は不満を募らせている。当然そこが外資に狙われる隙となってしまうわけだ。

そしてセブン&アイのグループの中で、最も外資から魅力的に見えるのは日本の「コンビニ」だ。

近年爆発的に伸びたインバウンドで日本に訪れた外国人からは「便利さ」や「美味しさ」など、その商品のクオリティの高さや充実ぶりが人気となり、SNSなどを通じて世界にその存在が知られるようになっている。

同業がそのノウハウを手に入れたいと思うのも自然な流れだろう。

企業の業務効率を上げることが急務の日本経済

日本人の生活に密着したコンビニ、そのトップリーダーである「セブンイレブン」や、古くからの馴染み深いスーパー「イトーヨーカドー」は、共に同じグループ内にあって置かれた立場が真逆だが、どちらも日本人が作り上げた利便性の高い小売店、サービスであり、今後どうなっていくのか気になるところ。

今回の買収の話題によって、同じように日本的な「持ちつ持たれつ」の古い体質の企業は危機感を持つべきだろう。元々日本のサービスは素晴らしいが、サービス産業では生産性の低さが長年の課題でもあり、それが海外資本より(優秀でありながらも)企業価値が低い一つの要因となっている。

日本の経済にとって円安や国力云々が問題なのではなく、企業の業務効率を上げることが急務なのだ。これを機に日本の企業はもう一度「企業価値」というものに真剣に目を向ける必要があるだろう。

 

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