アジア大会サッカー決勝の結果に日本は沈黙?兵役免除を賭けた韓国とのズレ

”「朝鮮半島は盛り上がり、日本列島は沈黙」”

10月7日、中国・杭州で開催されているアジア大会のサッカー男子決勝で、U-22日本代表はU-24韓国代表と対戦し、1-2で惜しくも優勝を逃してしまったが、一方の勝利した韓国ではメディアがこのように報じている。

確かに日本からすれば優勝を逃したのだから悔しさはあるが、果たして彼らがいう「沈黙」するほどのショックはあったのだろうか…

少々日本と韓国が今大会に賭ける(期待する)ものにズレを感じずにはいられない。

なぜ階級(選手レベル)が対等ではなかったのか?

大会のルール(年齢制限)は「U-24(アンダー24)」24歳以下の選手にオーバーエイジ3名までOK。

だが日本代表は今大会をパリオリンピックを見据えての「強化」を目的に「U-22(アンダー22)」22歳以下の選手を招集して戦っていた。一方、韓国代表は「U-24」24歳以下の選手にオーバーエイジもフル活用しており、そもそもチーム作りの考え方が異なっていたのだ。

また、年齢だけではなく、招集されたメンバーのレベルにも違いがあった。

日本代表は22歳以下の中でもベストな選手を招集しておらず、約半数は大学生だったため、かなり未知数なチームであったのは否めない。

協会としては表向き「経験を積ませる」ことに比重を置いたメンバー選考ということらしいが、現実は終盤戦に差し掛かっているJリーグ(J1)や、海外組も代表ウィークとは全く関係のない時期という所属クラブの問題に加え、U-22はアジア大会の直後にアメリカ遠征を控えていることから、主力となる選手の招集は難しかったというのが主な要因だったと思われる。

それともう一つ大きな理由として、サッカーは来年の2月にアジアカップが控えている。こちらの方はA代表レベルのトップ選手が招集され、真のアジアナンバー1を決める大会になるため、このアジア大会の位置づけ自体が微妙なものになってるのだ。

これは他競技にも当てはまり、ほとんどはオリンピックに照準を合わせているため、A級の選手を参加させていない競技も多い。まさにアジア大会の裏でオリンピックの出場権をかけて戦っているバレーボールや、世界選手権が行われている体操など、アジア大会よりも重要な大会が被っているケースも散見されることから、やはり若手選手の経験の場として位置づけている競技が多いのだろう。

ただ、韓国に限っては例外なのだ。

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韓国は「兵役免除」が最大のモチベーション

今大会には韓国の至宝と言われ、今季パリ・サンジェルマンに加入したことで話題になった「イ・ガンイン」が参加している。日本で言えばレアル・ソシエダの「久保建英」が呼ばれているのと同じレベルだが、久保の招集は全く議論にすらならなかったことを考えれば異例だ。

それはなぜかと言えば、韓国の選手には常に「兵役」という言葉が付きまとう。韓国人の男子は、通常18か月間の兵役を義務づけられており、28歳までに入隊しなければならないとされ(例外的に満30歳まで)それはどんなに有名人であろうと例外はなく、当然「イ・ガンイン」にも当てはまる。

兵役は特にキャリアの短いスポーツ選手にとっては死活問題となるため、ノルマ(優勝や金メダルの獲得)を達成すれば免除が受けられる国際大会などでは、日本や他国のそれとはまた違ったモチベーションを持って臨んでいる。

そして日本などのライバル国がレベルを落として参加しているアジア大会こそが、彼らにとって最も結果を出せる(兵役免除を獲得できる)絶好の場ということになる。

もちろん所属クラブも保有する韓国人選手の「兵役」は気になるところで、市場価値にも直結するため、普通なら派遣に消極的なクラブも協力的になるのだから、抱えている事情によって根本的なモチベーションや作られるチームにズレが生じていたのは当然といえば当然なのだ。

ちなみに、今大会ではローラースケートの試合で、1位を走っていた韓国の選手がゴール直前で金メダルを確信し、両手を広げてフィニッシュをした隙に後ろを走っていた台湾の選手が足を延ばして「つま先の差」で逆転されたというケースが話題になった。

また、記憶に新しい日本代表が優勝したWBC(野球)でも、韓国はオーストラリア戦で二塁打を打った選手が喜びのあまりガッツポーズをした際にベースから足が離れ、そこをタッチされアウトになったということもあったりと、韓国ではこういった珍事がたびたび起こるのは、モチベーションが高いこととは裏腹に、背負っているものが大きいがために喜びが爆発してしまうということなのかもしれない。

◇  ◇  ◇

結論から言って、今回の日韓戦に負けたことで日本のサッカー界やファンに「沈黙」するほどのショックは無かったが、戦った選手も含め、それで良かったのかという議論はある。

U-22にしろ韓国のU-24にしろ、これからの若手には変わりはないが、一方はサッカー選手としての将来を左右する戦いだったのだから、そのモチベーションはあまりにも違ったと言わざるを得ない。

それに対する日本は、たとえ2軍か3軍の選手だったとしても、日本代表に選ばれたからにはチャンスだったわけで、そのユニフォームに袖を通す限りはプライドを持って戦うべきだったが、とても腰が引けていて点差以上に戦えていなかったのが残念だ。

いずれにしろ、このアジア大会での日韓戦は終わったが、奇しくもこの決戦を前に、本来のU-22のアメリカ遠征のメンバーが発表されていた。

ただそのメンバーに久保はいない。もはやそのレベル(年代)を飛び越えてる彼に少しでも追いつこうという選手が、今回のアジア大会を経験した選手から出てくることを期待したいものだが…

 

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